ワンダーエッグ・プライオリティ雑感【7話】

【リカの成長物語】

 今回もせっかくなので感想をだらっと書いていきます。

 

 さて、今回の7話は本当に面白かったです。今までの中で一番好きな話かもしれません。リカが成長する様がとても分かりやすく描かれていました。

 一言でいうと、5話でもすでに出てきていた死への誘いを、リカが乗り越えるという内容なのですが、ねいるは「相手の目的の本質を突く」ことでそれを看破し、リカは「自分の大切なものと向き合う」ことで自分を保つことができました。それぞれの個性が出ていて面白いと思います。

 マンネンにとってのママが自分であることに気付き、リアルなママも自分を守ろうとしていることに気付いたリカ。最後のママとのやりとりは、リカなりのなんとも不器用な距離感を感じられてとてもよかったです。

 自傷行為を否定するでもなく、親とは仲良くしなくちゃいけないという話でもなく、みんながみんな、自分なりの納得できる距離感で問題に向き合ってうまいことやっているんだよという、悪く言えば諦めのような、それでいて優しい視線を感じさせる結論だったのではないでしょうか。

 

【リカは子ども】

 7話のタイトルが14歳の放課後であるように、リカたちはまだ14歳の中学生。思春期真っただ中で子どもと大人の間で心も体もどっちつかずの不安定な時期です。 

 口紅を塗って大人ぶってみても、すぐに拭ってしまうくらいには恥ずかしさがあるっぽい描写もあります。

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  アイと一緒に行ったバッディングセンターで空振りするシーンでも、一つも球にバットを当てられていません。大人ってなんだ? と悩みながらも、答えにたどり着かない、悶々とした心情の表現として分かりやすいでしょう。 

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 リカに関しては思春期の子ども達が抱えやすい親(保護者)とのかかわりについての悩みが描かれました。親との関係は自分のアイデンティティの形成にも関わりそうです。他の子たちはどうでしょう。恋愛感情、自身の性、社会的な役割、その辺りの自意識についても描かれていくような気がします。

 

【揃う視線】

  このワンダーエッグ・プライオリティは台詞以外のところでもいろいろなことを表現しています。今回は特に、視線の高さが揃うシーンがいくつかあります。

  まず印象に残ったのがここ。リカのほうが背が低いので、普通だったら横に並んでも視線の高さは揃いません。ここは坂道になっているので少し進んだリカとアイの目の高さが一致するんですね。アイとリカは同じ立場から物事を見ていることの喩えなのでしょう。

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  そしてラストのリカとママがカウンター越しに座るシーン。

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 今までは 、どっちかが立ってたりして視線が揃いませんでしたが、ここでようやく初めて母と娘の視線の高さがだいたい揃います。これは母親が~というよりも、リカ側が母と同じ目線に立つことができたということかなぁと思うわけです。

 あとは、強いて言うならこの場面。

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 リカと狂信者の女の子が同じ視線の高さに並びましたね。この後どうなったのかは言うまでもありません。

 これまでは見落としていただけでひょっとしたら今までのシーンでも視線の高さが揃うという描写に意味をもたせていた可能性はありますね。時間があるときにでも見返してみたいと思います。

【ママは本当に自己中マジクソ母親だったのか】

 本編の内容をそのまま受け取るだけではなんとも判断できない感じはします。

 リカが言うようにこの母親は思い付きの嘘をついたり、思うようにならないとヒスを起こしたりしてきたのでしょう。ただ、リカの発言もどこまで信用していいものかわかりませんが。リカも結構ノリでごまかそうとしたりするのでその辺は親子で少し似ている気がします。 

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 それを踏まえると「父親候補はこの写真の5人の中のだれかで、ママは誰だか分かんない」という発言も、どこまで信用していいのかわかりません。全くパパを教えないのはかわいそうだ。でも、教えたくはない。という気持ちからこの歪な状況ができている可能性があるわけです。リカを守ろうとしてるけれど結果リカが苦しんでしまっている感じですね。

 まぁ、正直に言葉通り受け取って、ママはパパを知らないという真相でも問題はないでしょう。リカが、あの女は約束を守らない嘘つきビッチだという風に納得して終わっていた世界線もありそうです。

 ただ、ママが一つだけ本当のことを教えてくれた「女に金を要求する男は、全部偽物」という発言を踏まえてみるとちょっと違う見方ができる気がします。

 リカの中ではパパがだいぶ美化されてしまっています。まぁ、実際に一緒にいるママがあんな感じですから、まだ見ぬパパへの期待が膨らんでしまっているのが大きな要因でしょう。そのせいか「美人は財布なんか持ち歩かなくてもいい」という記憶に残った言葉をやたらと正当化している様子がうかがえます。普通に考えたら、かわいい人はお金を出してもらって当然だという価値観がプラスになることってあまりないでしょう。心の中で思う分にはご勝手にという感じですが。

 まぁ、要するに、リカのパパは他人から何か金をもらったりすることに対して当然という価値観を持つ人物だった可能性があります。まだ小さい子どものリカにこんなこと教えるくらいですからね。となると、母との別れの原因も、このパパの金銭に関する価値観による相違が考えられます。ママから金をたかったのか? お前は美人だからほかの男から金をもらってこい(ふんわり表現)ということを強要させられたのか? きっかけは分かりませんが、決定的な何かがあったのでしょう。そして、その手がリカに伸びる前に逃げ出した。そう考えることもできそうです。

 で、さらに話を飛躍させます。

 リカの中でパパが美化され、正当化されているという事実はママも知っているでしょう。しかし、ママの中でパパは危険人物だと考えているのならば、絶対に合わせたくないでしょう。じゃあパパの本当のことを教えたらどうなるのか? おそらくリカが猛反発し親子関係に亀裂が入るかもしれません。そもそもとしてリカはママにたいして自己中でヒスを起こすとかさんざんな言いぐさですから、まともに聞いてもらえないかもしれませんね。

 んで、これも飛躍なのですが、リカがアムカをするまで追い詰められたのは、ちえみの死がきっかけでしょう。登場したときからずっと言っていたように、リカはちえみのことを財布よばわりしています。これもおそらくはパパの影響。パパの言葉を真に受けて、他人から施しをもらうのは当たり前だ~という態度で生きてきたら、なんやかんやで人を死なせてしまった。これだけでもリカにとってつらい事実だったわけですが、そのパパがママから金銭をたかるクズと分かってしまった日にゃ、リカの心は完全に折れてしまうでしょう。ママがどこまで知っているかは定かではありませんが、一生懸命リカを守っているという感じがします。

 まぁ、この辺はただの想像なので全然違うことはもちろんあります。

 でも、リカもママも不器用な人間であることには変わりないですね。

 

 【キメ台詞と仲間外れ】

 ここから先は、今までの内容含めてつらつらと適当なことを書いていきます。

 はい、各方面からダサいと話題のキメ台詞。

 それぞれの少女にはそれぞれキメ台詞があります。

 

アイ  → トサカにきたぜ

ねいる → 私があなたの度肝を抜く

リカ  → あなたのハートに ズッキュンバッキュン

桃恵  → おとといおいで

 

 ただし、リカの4話でのキメ台詞は「あなたの急所に ズッキュンバッキュン」だったので、ひょっとしたら「ズッキュンバッキュン」だけがキメ台詞なのかもしれません。

 で、アイの「トサカ」というのは分かりやすく、卵関係、つまりは鶏に関連する言葉をもってきています。他の子はどうかとみてみると、ちょっと無理やりですがねいるは「肝」で、リカは「ハート」というように、鶏の部位の名前が入っています。おとといおいでは鶏関係なさそう……。

 で、これきっかけなのですが、この4人は全員が思春期の女の子という共通点があるものの、それ以外の点は結構ばらばらだなーと改めて気づいたわけです。

 それから、「3人」には共通しているけれど、1人は当てはまらないというパターンが結構あるように思います。いくつか挙げていきましょう。

 この主人公達4人の名前について、フルネームで書き出します。

 

 大戸 アイ

 青沼 ねいる

 川井 リカ

 沢木 桃恵

 

 共通点1つめは色がある。アイ→藍、青沼→青、桃恵→桃 という感じ。リカは色が含ませません。

 2つ目は水が関係する。青沼→沼、川井→川、沢木→沢。

 まぁ、こじつければまだまだ出てきますがパッと見てわかるのはこんな感じでしょうか。

 ほかにも、ねいるは社会人だが、他の3人は学生。桃恵は両親がいるようだが、他の3人は片親、もしくは親不在。まぁ、考え出すときりがないですね。僕の考えすぎなのか、それともあえてお互いを補完するようにばらけた属性をあえてもたせているのかそれはちょっと分かりません。

 

【彼女たちにとっての卵とは】

  今回、気になったのが、この最後の場面。アカと裏アカがいて、エッグガチャを買うスペースの背景です。

 ん??? ここはドームの中なのか? 確かに地下に潜るシーンがあるので純粋な外ではないかもとは思っていましたがこれは明らかに卵の殻を意識した造りでしょう。

 何とも意味深です。

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  こういう話はなんとなく、少女の心の中の殻を打ち破って成長していく~みたいな話になりそうな感じですが、今回はそれだけではなさそうです。

 うまく言えませんが、「卵からひよこ」への変化は分かりやすいけれど「ひよこから鶏」への変化はあまり意識されることがないということです。今のアイ達は卵から生まれたひよこなのだと思います。作中ではアイの服はひまわりと言われていますが、ひよこの色でもあります。それが前回6話の話で出た、相手を理解していこうとする気持ちをもつことで装いが変わって、ひよこから少し変化していったわけです。アイのキメ台詞にトサカが入っているのも鶏になることの伏線かもしれない……。

 普段はひよことして現実に立ち向かう。ワンダーエッグの世界では、自分自身と向き合い殻にこもって戦う。そういう分け方なんじゃないかなぁーという感じがします。

 

 さて、まだまだ書きたいことがありますがもうすぐ8話が始まるので今日はここまでにします。

 気が向いたらまた感想を書きたいと思います。では。